主に、小脳という後頭部の下側にある脳の一部が障害を受け、歩行時のふらつきや手の震え、
ろれつが回らない等の運動失調症状がみられる神経の病気の総称です。日本において難病指定を受けている疾患の1つです。全国で3万人以上の患者さんがいると報告されており、数十もの病型が存在することが知られています。
【原因】
遺伝性のものと遺伝性でないもの(孤発性)に分けられます。そのうち、遺伝性のないもの(多系統(たけいとう)萎縮症(いしゅくしょう)、皮質性(ひしつせい)小脳(しょうのう)萎縮症(いしゅくしょう))が全体の約2/3を占めており、原因はよく分かっておらず、病気の進行を左右するような食習慣などもありません。
遺伝性のものの多くは原因となる遺伝子とその異常が判明しており、現在はその病因遺伝子の働きや、病気になるメカニズムに応じて治療方法が研究されています。
【症状】
脊髄小脳変性症に共通する症状は、小脳性運動失調です。小脳性運動失調とは、複数の筋肉をバランスよく協調させて動かすことができなくなることです。具体的には、起立や歩行が不安定になる、字を書く、箸を使うなどの細かい動きがしにくい、ろれつが回らず言葉が滑らかに出ない、などの症状が出ます。障害を受ける部位によっては、パーキンソン症状(小刻み歩行、筋固縮、無動)や自律神経症状(尿漏れ、立ちくらみなど)が現れます。また、病気の期間が長くなると、食事が飲み込みにくくなる嚥下障害を認めることもあります。
【検査】
問診と神経学的な診察を行い、小脳性運動失調症状やパーキンソン症状の有無などを確認します。また、頭部MRI・CTで小脳や脳幹の萎縮・異常の有無について調べます。
【治療】
病気を根本的に治す治療法はないため、症状を和らげる薬を使います。小脳性運動失調に対して、タルチレリンの内服や酒石酸プロチレリン注射を行います。パーキンソン症状に対してはパーキンソン病の治療薬を使い、めまいや尿漏れなどには症状に応じた薬で治療します。
また、運動機能を維持するために、バランス訓練や歩行訓練などのリハビリテーションも重要です。日常生活において、起立や歩行の際にバランスを崩すことが多いため、手すりなどをつけて転倒リスクを少なくすることが大切です。さらに、嚥下障害がある場合は誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、とろみをつけるなどの食事形態の工夫も大切です。
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