体は亜鉛をはじめとする微量元素やビタミンでうまく働いています。亜鉛は体内に約2g存在していて、筋肉に60%、骨に30%、肝臓・腎臓などに10%程度の割合で分布しています。血清亜鉛の基準値は80~130μg/dlですが、100μg/dl以上が理想で、70μg/dl以下は危険領域といえます。50μg/dl以下では腸管破裂や肺炎、糖尿病患者さんの足壊疽などの症例報告があります。

亜鉛の機能

亜鉛の機能としては、新しい細胞を作ったり、免疫力の向上、筋肉や骨の形成等があります。

免疫
亜鉛は、体の中のウイルスなどと戦うT細胞、B細胞や、免疫システムを調節しているたんぱく質を活性化し、免疫力を向上させます。
妊婦さんへの影響
胎児が育つには亜鉛が必須で、母体から胎児や羊水へ供給しています。妊婦さんは亜鉛が不足しやすく、不足すると脱毛やうつ傾向、肌荒れ、感染症などのリスクがあり、また亜鉛値が40μg/dl未満になると流産のリスクが高まるとされています。妊娠初期の亜鉛値が低いほど出生体重が少ない傾向があるため、妊娠が分かった時点で亜鉛値が低いようであれば、亜鉛を補充をするとよいと考えられています。

また、2016年~2017年の調査によると妊産婦の方の死因の約3割が産後うつによる自殺だそうです。母乳には血液の約8倍の亜鉛が含まれています。亜鉛たっぷりの母乳を赤ちゃんに与えることで授乳婦さんは亜鉛不足になりやすく、そのことが産後うつに関係しているのではないかと考えられています。

子どもへの影響
子どもの亜鉛不足は接触性皮膚炎を引き起こす要因の一つです。おむつかぶれのような湿疹ができて痛みで泣いてしまうこともあります。

亜鉛には情報を伝達する役割もあり成長ホルモンの働きを助けてくれます。低身長児が亜鉛を摂取したところ、身長増加が見られ低身長が改善されたという報告もあります。

アレルギー
亜鉛は、アレルギー反応に関わる細胞の生成に関与しています。亜鉛が不足すると細胞がうまく作られず、アレルギー物質が細胞から流失し、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、食物アレルギー、アナフィラキシー、鼻炎などが引き起こされます。

アトピー性皮膚炎の治療で、6ヵ月後に亜鉛値を80μg/dlから110μg/dl近くに増加させたところ、IgEが5000近くに減少した例があります。

糖尿病患者さんへの影響
亜鉛はインスリンの生成や貯蔵と分泌の調節に関与しており、亜鉛摂取不足の人に亜鉛を補充すると糖尿病発症を抑えられると報告されています。糖尿病患者に亜鉛を投与したところ、高血糖が改善され、HbA1Cと尿中微量アルブミン排泄量が低下した例があります。

その他にも、亜鉛投与でケガがの治りが早まったり、疲労感、味覚障害、肝の繊維化、肝硬変を改善した例もあります。

価格の比較

亜鉛含有量(mg)
価格(円/1錠)
ノベルジン
(低亜鉛血症治療薬)
25269.5※
50422.3※
サプリメント10~159~13程度

日経メディカル処方薬辞典参照

ノベルジンもサプリメントも、摂取量の目安は1日1錠。ノベルジンは、低亜鉛血症の場合に保険適用となります。

亜鉛はどのくらい摂ると良いのか?

1日あたりの推奨量(mg/日)

男性
女性
15~69歳108
70歳以上97
妊婦10
授乳婦11

平成29年の調査によると、日本人の亜鉛摂取量の平均は男性で8.9mg/日、女性で7.4mg/日で、目標とする量より低い傾向があります。
亜鉛の摂取量の上限は、男性は40~45mg/日、女性は35mg/日と定められています。亜鉛は普段の食事で過剰になる可能性は低いですが、サプリメントなどの不適正な利用によって過剰摂取が続くと、銅の吸収阻害による銅欠乏、貧血、汎血球減少、胃の不快感などを起こします。

食品に含まれる亜鉛の量

食品
牡蠣
豚レバー
牛もも肉
米飯(精白米)
納豆
100gあたり亜鉛量(mg/日) 13.2 6.9 4 0.6 1.9 1.3
1食あたり 目安量 60g(5粒) 70g 70g150g(1杯)40g(1パック)50g(1個)
亜鉛量(mg) 7.9 4.8 2.8 0.9 0.8 0.7

亜鉛の吸収率:30%程度
吸収を促すもの:ビタミンC
吸収を阻害するもの:フィチン酸(穀類や豆類に多い)、食品添加物

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